すべての失敗要因は成功事例のリサーチ不足です。
ディズニーをただ眺めているだけか,それとも仕事のヒントとするかで決まります。
ディズニーパーク体験を仕事のヒントにするための事前知識をお伝えします。
では,具体的にSCSEをご説明していきます。
1. Safety(安全)
先に書きましたように,ディズニーは安全第一の会社です。建設現場みたいですよね。でもそうなのです。
私はレストラン勤務でしたが,いちばん念入りだったのが食の安全研修でした。ディズニには手の洗い方にもマニュアルがあります。最初の研修では30秒で手を衛生的にかつ効率よく洗う手順がビデオになっていて,それを見ながら,真似て覚えます。ディズニーのうまいところはこれに「30秒手洗い」というネーミングがされているということです。「手をよく洗いましょう」と言っても,良くの基準は人それぞれですよね。でも「30秒手洗いを実行しましょう」と言えば,誰もが基準に達した手洗いができます。
ディズニーのマニュアルでは,「良く」「ちゃんと」「きちんと」などという曖昧な表現はないです。具体的に何を何回どのレベルでやるかが明確になっていることが,36年間食中毒が1回も起きていない理由だと私は考えます。
これを私は,私の尊敬する経営者さんの言葉を借りて“道徳的な言葉な言葉でごまかすな”と表現しています。
気づきと勇気
安全を守るには2段階あります。
第1段階は「危ない」と気づくことです。目の前の危険だけでなく,危険の可能性にも気づくことです。
第2段階はそれを相手やゲストに伝える勇気です。お子さんが高い石垣の上で遊んでいたとします。ディズニーキャストは,すぐに「危ないから降りようね」と声をかけます。もしかすると近くにいた親御さんが「うちの子はこのぐらい大丈夫です。自由に遊ばせるのがうちの教育方針です。」と言ってくるかもしれません。でも言います。礼儀正しさより安全が優先するからです。キャストはパーク内の安全を守ことは第一の使命だからです。
ヒヤリハットと5S
安全なパークを実現させるためにディズニーのバックステージでは2つの活動が行われています。それがヒヤリハットと5Sです。
ヒヤリハットとは,
1件の大きな事故の背景には29件の軽度な事故が存在し,その背景には300件の事故にはなってないがヒヤッとしたりハッとしたりの出来事が存在するという,事故の発生原因と対策を確率論で捉えたものです。多くの場合,大きな事故が起きると初めて原因追求の会議が行われ,色々と原因は出るのですが,対策は結局のところ「気をつけましょう」で具体策が出たことがないのが現実ではないでしょうか?
中には「ダブルチェック,トリプルチェックをします」など,生産性が下がり,効果も薄い策が飛び出します。私は断言します。10年の出版社での経験と10年のコンサルタントとしての経験からダブルチェック,トリプルチェックはまったく効果がありません。チェックする人が複数になることで,チェックの質が下がるからです。
チェック1人目×2人目×3人目 それぞれが時間をかけて全力で見ても
1×1×1=1でしかありません
でも,往往にして,全員が全力で見ません。どうせ次の人がちゃんと見るだろうからと80%の力で見ると
0.8×0.8×0.8=0.512です。
加えて,チェックする人が複数になることで,責任の所在が曖昧になります。責任の所在がない企業に成長はありません。破綻した日本企業のほとんどは,事なかれ主義と仲良し組織です。
5Sとは,
整理,整頓,清潔,清掃,躾の5つの頭文字をとった,とても日本的な略語です。あなたは整理と整頓の違いを明確に説明できますか?
整理 不要なものを捨てること
整頓 使いやすく並べて表示をすること使った後は元あった場所にきちんと返す
清潔 ゴミやホコリがなくきれいな状態を維持すること
清掃 きれいに掃除をしながら、同時に点検すること
躾 上記を習慣にすること
躾という言葉は最近間違って使われることが多く,残念に思います。ディズニーでは習慣と言っていますが,私はこの字「躾」が好きであえて使っています。身が美しいと書くんですよ。
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