ディズニーをやめた後,
独立創業のために様々な活動をしていましたが,実は,それと同時に就職活動もしていました。不安があったからです。毎日就職情報を見ながら,毎週1件履歴書を印刷会社に送ることをノルマにしていました。ところがこれがまったくうまくいきませんでした。
今振り返ると
原因として思い当たる事は多くありますが,採用を断られ続けると日増しに「自分は世の中から必要とさてていない人間なのだろうか」という疑問が私の頭の中を駆け巡るようになりました。自分のアイデンティティがだんだんボロボロになっていくのがとてもつらい日々でした。
ここで言うアイデンティティとは,
わかりやすく言うと「自分は何者か」「自分らしさとは何か」と言った自己存在証明のことです。
アイデンティティ・クライシスという言葉があります。
「自己の存在意義や社会的役割が失われた状態」を言います。
学校や会社に馴染めない 日々忙しく,緊急にやらなければならないことの洪水に流されている 自分の考えと大きく異なった文化や状況に接して戸惑っている
そんな中で
「自分はこのままどうなってしまうのだろうか?」
「自分の生き方はこのままで良いのだろうか?」
「自分は世の中に必要とされていないのではないか?」
つらく思い悩んでいても,なかなか抜け出すことができません。
私もこんな状況におち入りかけていました。
そんな経験から,私が講師を務める研修や講座では,受講生さんやクライアントさんに「あなたのアイデンティティを教えてください」とお願いすることがあります。
2つのタイプをよく見かけます。
シンプルなもので
「私は日本人です」
「私は○○会社の社員です」
「私は営業部長です」
と言った所属集団の一員やそこでのポジションをお答えになる方
もう1つは
「私は仕事ができる男です」
「私は金持ちです」
「私は優れた人間です」
的な,自分の理想とする状態をインストールするかのようなアイデンティティをお答えになる方です。
私は「私は~です」と言ったアイデンティティに疑問を持っています。
アイデンティティは自分だけでは確立することができないと考えているからです。
私は若い頃,
もしかすると今でも時折,自分のことが大事すぎて自分中心でしか考えられず,世のため人のためという考えは微塵もありませんでした。当然何をやってもうまく行かない人生でした。
そんな私に別の視点を与えてくれたのが異業種交流会への参加でした。
私の参加していた交流会では,同じテーブルの6~8人の経営者が順に,自己紹介と自分の仕事の紹介,どういう人がいたら紹介して欲しいか,を2~3分,長くて5~6分で話すというものでした。
多くの異業種交流会が会員相互のビジネスの発展成長を謳っていますが,参加する人の多くは,自分の仕事を受注したいという気持ちや目的を持っています。自分のビジネスそっちのけで,こういう商品が欲しい,何か良い商品があったら買おうという方はあまりいらっしゃいません。ですからはじめのうち私のテーブルでの自己紹介と仕事の紹介は熱心に聞いてはいただけますが,相談したいとか,説明が欲しいと言われることはありませんでした。
人は自分に関係ある情報にはアンテナを張りますが,関係ないものはスルーします。
参加者すべての人に関係があると思ってもらうことは難しいですが,ターゲットとなる人に「こんな良いことを与えます」と示す必要があります。
私の場合これができていませんでした。与えられた時間で自分の商品・サービスの良いところ,他と違うユニークな点だけを自慢げに話していました。
交流会の会費や参加費を無駄にしたくないと思い,自己紹介と仕事の紹介を考え直した時にヒントとなったのはマーケティングやビジネスモデルのフレームワークでした。
まず最初に考えたことは,
「エゴを捨てる」でした。話の主役を相手(ターゲット)にすることです。私の場合話してである自分が主役になっていました。
次に
ビジネスモデルの基本となる,誰に-何を-どのように,というフレームワークでした。このフレームワークは相手を主役にしたものです。
誰に(あなたは誰に貢献したいですか。役に立ちたいですか。)
何を(その人にどう感じてもらいたいですか。)
どのように(そのために具体的に何をしますか。)
研修やコンサルの世界でも,
ここ数年の特徴ですが,専門知識や問題解決スキルだけでなく,それに加えてヒューマンスキルが重要視される時代になりました。ヒューマンスキルを高めるのに,アイデンティティを確立することをお勧めします。
仕事でも,プライベートでも,
日常の行動全てが他者に貢献するアイデンティティに基づいているだけで,あなたは他者にとってかけがえのない人物となります。一瞬にしてあなたの力を最大化するのです。
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